交通事故によって生じる頭の後遺症

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これから年末にかけて増加する交通事故。昨年の1年間だけでも47万件以上の交通事故が発生し、3694人の尊い命が失われ、58万人弱が負傷しました。1年間にこれほど多くの人が交通事故によって傷ついていると考えると、他人ごとと考えず身近な問題として認識する必要がありそうです。もし、交通事故に遭ってケガを負ってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか?

交通事故で頭にはどんな後遺症が残る?

交通事故に遭うと身体の様々な箇所が傷つき、ときには後遺症が残る場合もあります。また、一口に「後遺症」といっても、”うまく歩くことができない”など身体の機能が失われるもの、傷跡や火傷の跡など容姿に関係するもの、微細な脳の損傷のように目には見えないものまで、実に様々です。

ここでは、「頭」に生じる後遺症を取り上げて紹介します。後遺症が日常生活にどのような影響を及ぼすのか、また後遺症への賠償やどのようなサポートが受けられるかについても考えてみましょう。このような情報を得ることで自分自身の万が一に備えることもできますし、身近な方が困っている際には力になれるかもしれません。

外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)

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外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)とは、頭や顔、首などの日常で他の人の目に触れやすい部分に、明らかな傷跡が残ってしまうことです(腕や脚に残った傷跡は「醜状痕」という別の後遺症に分類)。外貌醜状には、瘢痕(やけどの跡、あばたの様な跡)、線状痕(線状に残る傷跡)、組織陥没(組織の一部が陥没もしくは欠損)があります。

傷跡の大きさや部位も様々で、それによって日常生活へ及ぼす影響が異なります。例えば、髪もしくは帽子や衣服で傷跡を隠すことができるかどうかや、その方の職業(モデルなど容姿がダイレクトに仕事に影響するか)によっても、日常生活への影響の程度は異なりますよね。

そうはいっても、傷跡の程度や、職業、性別などに関係なく、体の目立つところに傷跡が残ることは、精神的にも大きな苦痛を伴います。残念なことに、傷跡が原因で今後の就職・転職や恋愛・結婚などの人生において重要な事象にまで影響してしまうことさえ考えられます。

外貌醜状の損害賠償

現在の日常生活だけでなく将来に渡って様々な影響が心配される外貌醜状ですが、どのような補償を受けることができるのでしょうか?外貌醜状が後遺障害として認定されると、慰謝料が認められるようになります。また、外貌醜状によってこれまでどおりに就労できなくなる場合も多く、収入低下分を「後遺障害逸失利益」として請求することができます。

請求できる金額は、後遺障害の等級やこれまでの年収によって変化するので、自分がどのくらいの金額を請求できる可能性か判断するには専門的な知識が必要になります。最近では交通事故問題を専門的に扱う弁護士事務所もあるようなので、まずは相談してみましょう。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳が損傷を受けることで、記憶、注意、遂行機能、社会的行動といった脳の「高次」の機能が障害され、日常生活に制約が生じている状態をいいます。ケガのように目には見えないものなので、本人もまわりも障害の存在に気づきにくく、「事故後になんだかうまくいかない」「事故後になんだか怒りっぽくなった」などといった状況に苦しんでいる方も多いようです。

脳の「高次」の機能が障害されると、日常生活にどのような制約が生じるのでしょうか?以下に代表的なものをまとめてみました。・記憶障害:新しいできごとを覚えられない、同じことを繰り返し質問するなど。・注意障害:ぼんやりしていてミスが多い、まわりの状況に気付かない・逆に周囲の物音などに気が散る、話がまとまらないなど。

・遂行機能障害:物事を行うときに見通しを持つことが難しく段取りを立てることができない、約束の時間に間に合わないなど。・社会的行動障害:思い通りにならないと大声を出す、怒りっぽくなる、自己中心的に見える行動をとるなど。

上記以外にも言葉の障害など様々な症状がありますが、すべての症状が生じるのではなく、人によって生じる障害も程度も異なります。そのため、同じ「高次脳機能障害」の方でも日常生活で生じる制約や困りごとは様々です。

また、障害の存在に本人が気づかずに困っていないけれど、周囲は本人の変化に困っている場合もあります。例えば、高次脳機能障害のAさん。仕事の指示をメモに取りながら聞き、「わかりました」と答えます。しかし、いつまでたっても仕事が終わりません。

指示にたどり着くまでの工程を想像できず、段取りを組むことができないのです。とうとう上司に「もっと早くできないのか」と指摘されますが、Aさんは一生懸命やっていて自分でもどうしてよいかわかりません。もどかしさや悔しさから上司に暴言を浴びせてしまいました。

上司は穏やかだったAさんがどうしてそのような行動をとったのかわからず、困惑してしまいました。というようなことが生じてしまいます。

高次脳機能障害の治療・リハビリテーション

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高次脳機能障害の治療は症状に応じたリハビリテーションを行うことが主となります。脳の損傷によって障害が生じている機能も、損傷部位の代替になる新たなネットワークを構築することで、回復を図ることができます。治療に当たっては、医師だけでなく様々な専門スタッフが本人のニーズを把握しながらリハビリの内容を考えてくれます。

日常で生じる困りごとにどのように対処すればよいか、より生活しやすくするにはどうすればよいか、リハビリや相談を通して一緒に取り組んでいきますよ。リハビリでは、対人関係の困りごとに対して認知行動療法を行う場合もあります。

高次脳機能障害のサポート

高次脳機能障害になると、本人はもちろん家族や周囲の人も困り悩みを抱えてしまうことが多いです。また、一般就労が難しくなった場合には経済的な問題も生じます。ここでは、高次脳機能障害の人が受けられるサポートについて紹介します。

本人や家族だけで悩まずに専門機関に相談したりサポートを受けたりすることで、生活のしづらさが緩和されるかもしれません。障害者手帳障害者手帳を取得すると、税金が減額されたり公共料金が割引されるなど、市町村の定めたサービスを受けることができるようになります。

高次脳機能障害の診断を受けると、精神障害者手帳を取得する方が多いようです。「精神障害」という名前なので、精神科医の診断書でしか申請できないと思いがちですが、リハビリテーション科や脳神経外科の医師の診断書でも申請が可能です。

ただし、何科であっても高次脳機能障害に詳しい医師を受診するようにしましょう。

本人の「障害」と名の付く制度への抵抗感も生じることが多いので、周囲は取得を無理強いせず本人とよく話し合うことが大切です。相談機関平成24年に始まった障害者総合支援法によって、都道府県が支援機関の配置や高次脳機能障害者に対する専門的な相談支援を行うこと、適切な支援が提供される体制を整備することなどが定められています。

そのため、各都道府県には必ず相談機関がありますし、当事者や家族の会を発足させている場合もあります。ご自身の市町村の相談先については、保健所に尋ねてみるのもよいかもしれません。